行政書士試験は試験科目の多さが特徴の1つ。
法令科目だけでも憲法、民法、行政法、商法、会社法と、幅広い勉強をこなさなければなりません。
これらを効率よく学習するには、複数科目を同時並行で学ぶことが役立ちます。
この記事では、行政書士試験対策において各科目を並行して学ぶことのメリットと具体的な方法についてお伝えします。
目次
並行学習のメリット
各科目を並行して学習することのメリットはおもに、内容を忘れにくいことと理解を深めるのに役立つことの2点が挙げられます。
それぞれ考えてみましょう。
勉強したことを忘れない
行政書士試験の試験範囲はとても広く、各科目にボリュームがあります。
そのため、期間を区切って試験科目を1つずつ学習していると、初期に勉強した内容を忘れてしまうかもしれません。
各科目を同時並行で勉強すれば、「行政法を勉強しているあいだに民法をすっかり忘れてしまった」などの事態に陥らずに済むでしょう。
また並行学習を習慣にしておけば、「特定の科目に集中しすぎて試験範囲が終わらない」という失敗も避けられます。
関連付けや比較によって理解が深まる
異なる科目であっても、深く関連していることがあります。
いくつか例を挙げるだけでも、次のような関連性を見いだせます。
- 憲法は法律の根幹をなしているため、民法や行政法など他の法令を支える大原則である
- 1つの判例を憲法の観点から学ぶこともあれば、行政法の観点から学ぶこともある
- 商法は民法の特別法という位置づけであり、深いかかわりがある
- 法令科目と一般知識科目のあいだにも、共通する話題が出てくることがある
このように各試験科目には多くの関連性があります。
ですから複数科目を並行して学習すると、関連付けによって理解が深まっていきます。
たとえば、人権に関わるこんな事案の判例が憲法で登場します。
Aさんは薬局を開くために県知事に営業許可を申請したが、不許可になった。
Aさんは不許可を不服として取消訴訟を提起した。
これは職業選択の自由を謳う憲法22条をもとに争われた訴訟です。
一方、この事件を行政法の観点から見てみるとどうでしょうか?
Aさんが行なった許可申請は「行政手続法」に規定されているものです。
さらにAさんが起こした訴訟は「行政事件訴訟法」で勉強します。
憲法と行政法を同時並行で学んでいると、このように関連性を発見しながら理解を深めていくことができるわけです。
それに加えて、他の法律との比較が重要になることもあります。
たとえば商法は民法の特別法という位置づけなので、民法との違いに注目して勉強する必要があります。
また行政法と民法は対象が異なる法律なので、似た言葉が出てきても内容が違うことがあります。
複数科目を同時に勉強していれば、そうした違いに注目して整理していくこともできるでしょう。
並行学習の方法
実際に並行学習を行なうには、混乱しないよう注意が必要です。
ここから、並行学習を行なうための具体的な方法を考えてみます。
1周目は1科目ずつ勉強する
並行学習は効果的ですが、初学者が最初から複数科目を並行学習するのは危険でしょう。
頭が混乱してしまうからです。
1周目は試験科目の概観がおもな目的なので、1科目ずつ期間を区切って勉強するのが良いと思います。
全体像がつかめたら並行学習を始める
試験範囲を1周(場合によっては2周)して全体像がつかめたら、並行学習を開始して良いでしょう。
1日に勉強する科目を1科目に限らず、「憲法と行政法を1時間ずつ」のように複数科目に取り組むことができます。
もちろん並行学習によって知識が混乱してしまうと感じた場合には、いったん元に戻す必要があるでしょう。
また、全科目を同じ割合で勉強するという方法は避けます。
科目ごとに配点が大きく異なるので、力の入れ方も変える必要があるからです。
商法・会社法については戦略的に捨てる人も少なくありません。
(このテーマについては改めて触れたいと思います。)
行政書士試験では学習戦略がとても重要なので、常に本試験までの残り日数を意識した学習を心がけたいものです。
いずれにしても、試験直前期には並行学習が必須になるでしょう。
本試験では3時間のうちに全科目を解くことになるからです。
本試験での頭の切り替えに慣れるためにも、早めに並行学習を始めることをおすすめしたいと思います。
まとめ
並行学習によって、記憶を保ちやすく、理解が深まりやすくなります。
初期の学習は1科目ごと期間を区切って行ない、全体像をつかんだあとは並行学習を行なうのが効果的でしょう。
自分に合った学習法を見つけ、効率良く試験範囲を網羅していくことが大切です。