行政書士試験の学習は、条文理解が中心になります。
テキスト・参考書にも条文は引用されていますが、シンプルな六法を1冊持っていると役立つでしょう。
私は伊藤塾の『うかる!行政書士 総合テキスト』に付属している『ハンディ六法』をメインに使いました。

この記事では、学習段階に応じた六法の使い方・勉強法について考えていきます。

学習初期は六法を使わない

法律初学者にとっては、法律の条文はとても難しい言い回しに感じます。
そのため、最初から六法を単体で読むと勉強がいやになってしまうかもしれません。

学習初期は、あくまで各試験科目のアウトラインをつかむことが大切です。
入門書や1冊もののテキストを読むと、憲法・行政法・民法などの法律についてなんとなくわかってきます。

条文が出てくるたびに六法を開いていると、なかなか学習が進みません。
最初は本の解説を読み進めることに集中すると良いでしょう。

全体像をつかんだあとは、条文をその都度チェックする

テキスト・参考書を何度か読むと、各科目の全体像をつかむことができます。
ある程度知識をインプットしたあとは、アウトプット(問題演習)を始めることになるでしょう。
この段階になってきたら、いよいよ六法の出番です。

といっても、六法を単体で通読するわけではありません。
理解が深くなってからでなければ条文の素読にはほとんど意味がないからです。

すべての条文を読むのではなく、テキストや問題集に出てきた条文を六法でチェックするようにしてみましょう。

しかし、出てきた条文すべてをチェックする必要はありません。
テキストを読んでいて、「これって条文の表現ではどうなってるのかな?」と感じたところ。
問題集を解いていて、「この問題は条文を知っていれば解けたはず!」と思ったところ。
このように、勉強していて気になったところを六法で確認していきます。

当然のことながら、テキストも問題集も本試験も、条文(または判例)を根拠に作られています。
学習中期には、条文の根拠を確認する作業が実力アップにつながるでしょう。

直前期には条文素読を行なう

インプット・アウトプットを繰り返していくと、各科目の理解も深まっていきます。
この段階になったら、六法を通読するのが効果的です。
あれこれと脱線せずに読み進めるという意味で「条文の素読」とも言いますね。

学習後期になると、条文理解がかなり深まっているので、素読が効果的になります。
素読から得られる効果には次のようなものがあります。

  • これまで学んできたことを振り返ることができる
  • 知識に抜けがないかの確認になる
  • 条文全体の構造を把握できる

素読をしながら、1条1条、学んだ知識を振り返ることができます。
六法は総復習に使える最高のツールになるわけです。

素読をしていて理解できない条文があったら、そこは学び直す必要があるでしょう。
第1条から順番に読んでいくことで、知識の抜けを見つけることができるのです。

さらに、条文だけをシンプルに通読することによって、改めて各法律の構造をしっかりと把握することができます。

ちなみに本試験では、どのような条文があるかということだけではなく、どのような条文が存在しないかという知識も問われます

学習後期~直前期には、六法の素読を繰り返すことで最終チェックをしていきましょう。

六法の活用法は科目によっても異なる

ここまで見てきた六法の使い方ですが、科目によっても異なってきます。
条文の素読がとくに大切なのは憲法と行政法です。

憲法(とくに統治分野)は条文知識が直接問われます。
細かい数字にも注意しながら条文を何度も読み込みましょう。

行政法はメイン科目であり、どの法律も体系的に作られています。
行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法の共通点や相違点に注意しながら、全条文を理解できるレベルを目指しましょう。
国家賠償法は6条しかないので、しっかり把握しておきます。
地方自治法は、条文の読み込みまでは必要ないでしょう。

民法に関しては、重要条文のチェックは必要ですが、素読までは必要ないと思います。
条文のなかには、試験では問われない細かい情報も多いからです。
しかも民法は1000条以上あるので、読むだけでかなりの時間がかかります。

民法の場合はむしろ、重要論点の考え方をしっかり理解していることが大切です。
また、重要論点については条文の文言を覚えていることも必要です。
たとえば2017年度の本試験では、民法の条文をそのまま答えさせるような記述式問題が出されました。

このように、六法は科目によって使い分けるのが良いでしょう。

まとめ

六法の使い方は、学習初期・中期・後期によって大きく異なります。
各ステップに応じた使い方をすることによって、必要な条文知識をしっかり身につけていきましょう。

科目によっても六法の重要性は違ってきます。
各科目の特性を理解したうえで六法を活用していきましょう。